補陀落山 大善院 - 弘報 - 涅槃図

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弘報

仏ほっとけない話 「涅槃図」

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涅槃図

釈尊から始まる仏教のことを身近に語るとき、我慢くらべの座禅みたいにどれくらい長く座っていられるかとか、豪華に作られた袈裟の値段を気にする人が少なくない。
座っていかほどの効果があるのか眼に見えてこない座禅と違い、袈裟には形がある分比べることができ、好みもいえる。しかし、そのわりには神秘的なベールに包まれ、なにやら謎めいている。それが元祖パッチワークのうえ、細かく縫ってあればあるほど有難いというので、前回に続き袈裟の話。
釈尊最期を描いた涅槃図にも袈裟がでてくる。これがあればどこでも修行生活ができる修行僧の持ち物で、どこに描いてあるかというと釈尊の頭上の沙羅樹の枝に掛けられた錫杖と一緒にある布袋がそれである。
此の袋の中には最小限度で最大限度の三枚の袈裟が入っていて三衣という。その区別は小片の布を縦に縫い合わせた条の数で分けられ、道行作務用の五条と、常服礼拝用の七条、それに九条以上で最上礼服になる大衣の三種である。
元来、古代インドに限らず大きな布は珍重されるものなので、修行僧の中にも、次第に執心する者もあったという。これを小片に截断して、価値をなくして執着の念を断たせ、また、パッチワークにも共通する小片の布の中にも無限の価値を見い出し、それらを集めて縫うことで袈裟を大事に扱う精神を込めた。
ところが、大衣の中の上品の二十五条となると大小百枚以上の布を集めて、鳥足縫や馬歯縫とよばれる細かで堅牢な縫い方をするので手間がかかる。むやみには縫うことはせず、特に、古いものは稀小で、実際に見ることは少ない。
焼きものの町で知られる常滑では、古くから多くの陶彫が焼かれた。その中に、二十五条の袈裟を通肩に着けた達磨立像の作品がある。
戦前、常滑美術研究所で平野六郎(1873~1938)から西洋彫刻を学んだ杉江惣七(1881~1963)の作である。
意志の強い、迫真の修行像を写実的に表現してあり、33cmのスケールとは思えない出色のできばえ。あきらかにモデルがあり、身に着けた二十五条袈裟の行方を尋ねたいところである。